四季がある日本では、それぞれの季節で花を愛でる習慣があります。特に厳しい冬を越え、春の訪れを知らせる「桜」は日本人の文化に密接に関わるものでした。科学的な温度観測ができなかった時代には、桜の開花が稲作開始の時期を知らせました。平安時代には、貴族たちの中で桜を愛でながら歌を詠む花宴が行われました。江戸時代には幕府の政策として花見の推奨が行われ、上野、隅田堤、御殿山など花見の名所が作られ、大いににぎわいました。
花見は、唯一身分関係なく誰もが楽しめる娯楽であり、年に1度の重要な行事でした。それは現在の私たちも共感することができるのではないでしょうか。今日、桜の開花予報や花見のにぎわいを知らせるニュースに心躍らせたりするのと同じように、江戸の人々は毎年春になると江戸中が桜色になるのを心待ちにしていました。まだまだ厳しい寒さが続きますが、当館で満開のお江戸の春をお楽しみください。