1970年代から作品に写真と映像を新たなメディアとして登場させた今井祝雄は、次第に『時間』表現に制作のテーマを移していきました。現像しないと確認できないフィルム写真、鏡像効果を見せるガラスのブラウン管、「時間の巻尺」としてのオープンリールのビデオテープなど、当時のメディアの物質的特性を活かし、そのシステムの中に表現者が身体的に介入し、イメージを重層的に展開するパフォーマンスやインスタレーション、映像作品を続々と発表し、時間の可視化を試みました。2015年秋より東京国立近代美術館にて開催された「Re: play 1972/2015」や本年2月よりロンドンのテート・モダンで開催される「Performing for the Camera」では、当時の写真・映像作品が出展され、今井が取り組んできた表現方法と制作テーマの革新性が改めて評価されています。1964年の初個展「17才の証言」で鮮烈なデビューを果たした今井は、前衛芸術家グループ「具体美術協会」に最年少メンバーとして迎えられ、同協会の「具体展」等への出展の他、当時盛んに開催されたアンデパンダンや公募展などにも積極的に参加しました。今井の制作最初期にあたる1960年代には、キャンバスに凹凸を持たせた「白」の作品で、絵画―レリーフ―立体の境界を越える表現を拓き、1970年代には写真・映像作品へと更に関心を拡大しました。本展は2012年の「Retrospective―17才~22才」、2014年の「Retrospective―影像と映像」に続く今井祝雄の回顧展 第3弾となります。