田中青坪(たなか・せいひょう)という画家を知っていますか。
大正、昭和と日本美術院を中心に活躍した、群馬県前橋市生まれの日本画家で、仲間内からは「永遠のモダンボーイ」などと呼ばれました。モダニズムを追求した作風を展開し、次々に新風を試みながら、晩年は深い自然観照による風景画を制作し、独自の世界を探求しました。
その温厚で誠実な人柄から、所属団体や洋画・日本画の区別なく多くの画家と交流を持ち、なかでも将棋仲間であった梅原龍三郎ら洋画家との交流は、青坪の表現に影響を与えました。絵具を幾重にも塗りながらも明るく澄んだ色彩は、青坪の特徴であり、大きな魅力をたたえています。
はじめての回顧展となる本展覧会では、日本美術院展覧会出品作を中心に当館所蔵作品のほか、県内外の美術館や個人所蔵家より集められた本画やスケッチなど、各年代の優品を集めて展示します。戦後は、制作以外のことに煩わされるのを嫌って画廊などでの作品発表を行わなかったため、作品を一堂に見られる貴重な機会です。およそ70年の画業をぜひご覧ください。
また、特別展示として市内所蔵家の協力を得て、青坪が生まれた明治期から昭和初期の前橋の様子を伝える貴重な風景絵葉書をご紹介します。あわせてお楽しみください。