世界的に時代と美術運動の問い直しが盛んな現在、「具体」と同時代でありながら、それらと対抗的であった津高和一(1月)、木下佳通代、奥田善巳(2月)、堀尾貞治(4月)、武内ヒロクニ(5月)を連続的に紹介させていただきます。
奥田善巳作品の根底にある「感情の排除」を自身の言葉から辿ってみる。
黒く塗りつぶしたキャンバスがさまざまなストロークで塗りつぶされていく。筆の勢い、重なり合いと余白。黒く塗りつぶしたキャンバスがさまざまなストロークで塗りつぶされていく。筆の勢い、重なり合いと余白。私たちはそこに作家の感情を読み取ろうとする。奥田は「絵に感情的な面は入っていない。それを抑制した『冷たい』絵画を目指している」「何かを写し取る絵画ではなく、それ自体が何かを語る『自立した絵画』」「仕事では非情であり続けたい。作品を惜しむこともしたくない」 (2003年9月。ギャラリー島田「奥田善巳展」。神戸新聞三上喜美男インタビューから)
奥田は1963年の読売アンデパンダン展デビュー後、河口龍夫ら9名で美術家集団「グループ【位】」を結成しネオ・ダダやミニマリズム、抽象表現主義の流を汲みながら数々の現代作家へ強い影響を与えました。今回は70年代のドローイングから80年以降の単色線描による大作を中心にご覧いただきます。単色でありながらも表情豊かに感じられる作品からは、冷静さと力強さが同居した奥深い知性を感じさせます。