作品を「つくること」ではなく、「見せること」に視点を置くならば、果たして芸術はどのように浮かび上がってくるのでしょうか。この問いをめぐって制作を続けてきたのが、国際的な舞台で活躍するドイツ在住の美術家、竹岡雄二(1946年-)です。
彫刻を学んだ竹岡は、作品を「見せる」際に必要となる台座の存在に注目し、台座そのものをモチーフとする制作に着手します。厳選された素材、形、色彩によって制作された台座は、私たちの視線を誘いこむ彫刻的な姿をまとった作品としてあらわれます。その後、ガラスケース、ショーケース、棚など、陳列するための仕組みをモチーフとした作品に加え、陳列のための空間に眼を向けた制作を手掛けていきます。こうして「見せること」を探るために台座から始まった問いかけは、展示される空間・場所・環境へと拡がっていきます。
このたび、埼玉県立近代美術館と遠山記念館は、竹岡雄二の芸術を大規模に紹介する展覧会を同時開催いたします。埼玉県立近代美術館では、約30年間のドイツでの活動を20点あまりの代表作で振り返ります。遠山記念館では、文化財として知られる遠山邸(1936年竣工)の和風建築を舞台に、6点の作品を展示します。さらに「見せる」という観点から、竹岡が独自のコンセプトで遠山記念館所蔵の伝統的な美術品を選び、埼玉県立近代美術館において展示を行います。これまでの活動を回顧するだけでなく、作者が新たな試みに挑む展覧会です。