現代日本の染織分野に独自の世界を展開する志村ふくみは、大正一三年(一九二四)に滋賀県近江八幡市に生まれ、母・小野豊の影響で、織物を始めました。昭和三二年(一九五七)の第四回日本伝統工芸展に初出品で入選し、その後も受賞を重ねます。そして、平成二年(一九九〇)には、紬織の重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定されました。
草木からの自然染料で染められた糸によって織りあげられた作品は、多くの人を魅了し、国際的にも高く評価されています。「民衆の知恵の結晶である紬の創作を通して、自然との共生という人間にとって根源的な価値観を思索し続ける芸術家」として、平成二六年(二〇一四)に第三〇回京都賞(思想・芸術部門)を受賞し、平成二七年には文化勲章を受章しました。
このたびの展覧会では、代表作を中心に、初期の作品から最新作までを一堂に展示することで、六〇年におよぶ創作の歩みを紹介するとともに、志村ふくみの魅力とその芸術の核心に迫ります。