齊藤鴎舟 (さいとう おうしゅう)(1890-1987、東京出身)は明治37年頃、門下から幾多の画家を輩出した日本画家・松本楓湖 (まつもと ふうこ)(1840-1923)に弟子入りし、その後、巽画会展など中央画壇で活躍しました。昭和33年に家族を頼って栃木県小山市に移り住んでからは、地域の歴史や文化に因んだ絵画を多く描き、中でも『小山の伝説』の挿絵によって広く市民に親しまれました。画家として社会貢献に積極的だった鴎舟は、特に次代を担う青少年の情操教育に心を砕き、昭和38年、子どもたちのために様々な画題を描いた43点を小山第二小学校に贈りました。絵画は現在も小山市内の各学校で大切にされ、メッセージを発し続けています。
鴎舟の作風は美しい描線と洗練された彩色が特徴で、描いた題材は歴史、人物、花鳥画と多岐にわたります。現存する作品は30年間暮らした小山市に集中し、その気さくな人柄から、百点を超える作品が市内各処で大切に所蔵されていると言われます。鴎舟は後半生を送ることになった新天地・小山で、どのように画業に精進し才能を発揮したのでしょうか。また、優れた画家を迎え入れ、支えた地域の人々が、絵画と共に受け継いだものは何でしょうか。本展覧会は、小山の文化と人を慈しみ、親しまれてきた日本画家の画業をご紹介するものです。