境界を意識することで
生まれ出る表現
さまざまな切り口やテーマで収蔵品を展示する「コレクション+」シリーズ。前橋市ゆかりの若手作家の作品と収蔵作品を一緒に展示することで作品間の対話を促す企画です。今回は、「うちとそと」をテーマに異文化との出会いや自己/他者のような異なるものとの間に存在する境界を意識することによって生まれた作品を紹介します。
南城一夫(1900-1986)は、1924年に渡仏しその後13年間をパリで過ごし、清水刀根(1905-1984)や久保繁造(1911-2006)は、ヨーロッパへの旅を通じて異国で出会った人や風景を情緒豊かに作品に描きこみました。また、中村節也(1905-1991)は、ヨーロッパのみならずアメリカ、エジプト、中国などを取材しながら「世界の遺産シリーズ」を制作しています。
今井充俊(1957-)や金井訓志(1951-)は、共に文化庁派遣芸術家在外研修員としてイタリアへ留学することで、テンペラ画などのヨーロッパ絵画の古典技法を自らの作品制作に取り込みます。また、白川昌生(1948-)は、1970年からの13年間をドイツを中心としたヨーロッパで過ごし、その間に制作された《コンセプト・ノート》からはベン・ヴォーチエやヨーゼフ・ボイスなどに大きく共鳴していることが分かります。
今回、前橋市ゆかりの若手作家として参加する川松康徳(1984-)は、白川の《コンセプト・ノート》を基に新作のインスタレーションを発表します。また、前橋出身の林麻依子(1987-)は、大学在学中から陶の作品を制作しており、作品の一部分をあえてくり貫き、陶の裏側を見せることで、作品の表と裏という二項対立から光と影、動と静のような新たな意味を作品に付加させます。