「アール・ブリュット」とは、フランスの画家ジャン・デュビュッフェ(1901-1985)が定義づけた美術の概念です。《生 (き) の芸術》と訳される「アール・ブリュット」は、ことに日本国内において独自の展開をしていることは注目に値します。その特徴のひとつとも言える障害のある人々の造形活動に目を向けてみると、滋賀県の福祉施設で行われてきた、これまでの取り組みが浮かび上がってきます。
福祉施設で育まれた豊かな造形活動の歴史を持つ滋賀県において、2019年、滋賀県立近代美術館は「アール・ブリュット」を新たなコレクションの核に加えた「新生美術館」として生まれ変わる予定です。本展は、新しい美術館の誕生に向けたステイトメントを示す展覧会として、滋賀県の福祉施設のユニークな造形活動の歴史を概観しながら、その先進的な取り組みがどのように継承され、展開してきたのかをバラエティに富んだ作品を通じて展覧いたします。表現という可能性を知り、それによって広がった作り手たちの世界―。生命 (いのち) の徴 (しるし) である数々の作品の魅力に出会う、素晴らしい機会となれば幸いです。