国際的な現代美術家・宮脇愛子が急逝され―周忌がきました。そこで生前の業績を偲び遺作展を開催いたします。
当館の展示室「大地」に半永久展示されている《うつろひ》の制作者である宮脇愛子は、若くして多くの芸術家たちと親交し自らも制作に勤しみ、世界各地の主要な美術館、画廊を舞台に個展やグループ展を開き、国際的なスケールで活動を展開し、はやくから絵画、彫刻といった境界に捕らわれない独自の視点と感性で、多様な作品を数多く生み出してきました。特にその評価を不動にしたステンレスワイヤーによる《うつろひ》シリーズは代表的な作品として世界各地に設置されました。中でも那岐山を借景にした当館の池から展示室「大地」に連なる《うつろひ》は、宮脇が最も愛してやまなかった思い出深い作品です。
本展は、宮脇愛子と奈義町が、1994年の奈義町現代美術館開館を起点として、奈義の場所と宮脇の時間軸とが繋がりをみせていくことを豊かな創作思考の軌跡をとおしてあらためて見つめる展覧会であります。
1950年代後半から70年代の平面・立体作品から、目に見えない大気の揺らぎと時間を表現した《うつろひ》へと移行していく中で出会た美術家、建築家、小説家など国内外の幅広いジャンルの表現者たちと親交を続け影響を受けあった交流の歴史を物語る貴重な資料も交えてご覧いただき、その交流が宮脇に与えたものについても探っていきます。
展示室「大地」に広がる《うつろひ》と、各ギャラリーに展示された作品群が、宮脇の過去から奈義を分岐点としてその後の表現へ移行する彼女の軌跡を作品と資料で辿る特別の場所=空間となることを願っています。