古来、「絵は黙せる詩、詩は語る絵」といわれてきました。ときに絵は詩のように語りかけ、詩は絵のような豊かな色彩とかたちをありありと提示します。事実、多くの画家が詩を書き、詩人が絵を描いています。画家たちは内面に醸され口にのぼった言葉を詩につづり、詩人たちはことばにしえぬ想いを絵に託しました。彼らの絵と詩は、一方が他方を補足するという性質ではないことは明らかです。それぞれが、かけがえのない切実な表現なのです。彼らの内面において絵と詩は不可分であり、画家や詩人といった名称は便宜的なものであると思わざるをえません。
日本近代において青木繁、村山槐多、長谷川利行など詩歌と画技において秀でた作家を見出すことができます。また、宮沢賢治、富永太郎、立原道造など絵を描いた詩人も少なくありません。萩原朔太郎は写真のほかデザインも手がけています。さらに戦後においては、具体詩、ヴィジュアル・ポエトリーと呼ばれる視覚に訴えかける詩が生み出され、北園克衛や新国誠一が活躍しております。今後、詩と絵は越境し、ともども新たな境地を開いていくと思われます。
本展は、明治から現代までの画家と詩人の詩と絵を一堂にあつめ、ひとつの観点から捉えるこころみです。