紀元前3000年頃、ナイル川の流域で誕生したエジプト文明は、巨大なピラミッドや壮麗な神殿を築き、長きにわたり栄えました。今日、古代エジプト美術と呼ばれるものの多くは、神の代理人であり国を統治する王(ファラオ)と、王を取り巻く社会の上層の人々(エリート)の墓に納められた絵画やレリーフ、彫像や装飾品などです。そこには彼らの生活習慣のみならず宗教や思想までもが映し出され、今なお神秘の光を放っています。
本展は、古代エジプト美術の魅力を「魔術」をキーワードに紐解こうとするものです。魔術的な力を帯びるとされたヒエログリフ、神性をそなえた石や貴金属などの素材、象徴的な意味と結びつけられた色に着目することで、永遠に命が続くことを渇望したエジプトの人々の強い来世信仰と世界観が浮き彫りとなることでしょう。
出品作品約150点は、世界屈指の古代エジプト美術コレクションで知られるスイス・ジュネーヴのガンドゥール美術財団の所蔵品であり、全て日本初公開となります。石碑やレリーフ、アミュレット(お守り)、宝飾品などの貴重な作品の数々を通して、古代エジプト美術の世界をお楽しみ下さい。