「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響あり」という有名な書き出しから始まる『平家物語』は、源平争乱期の壮大な物語として今日でも多くの人々に親しまれている作品です。この『平家物語』に『保元物語』『平治物語』を併せた歴史的に連続する三つの物語は、平安末期の武士の台頭から平家の滅亡までの源平争乱期の様相を、活き活きと、あるいは趣き深く伝えてくれる軍記物語の名作といえるでしょう。
この展観は、これらの壮大なストーリーを中心に据え、貴族から武士へと政権が代わる大きな転換期にあたる源平時代の様相を、美術作品によって紹介しようとする試みです。物語を描いた絵画、この時代を生きた人々の肖像画や書、さらに平安末期の文化を象徴する美術・工芸品などを展示し、当時の人々の美意識を探ります。
源平の物語には日本人独自の「滅びの美学」が見られると言われますが、後世にまで影響を与えた当時の人々の生涯からは、むしろ「生きることの美しさ」を学ぶことができるのではないでしょうか。この展観では、様々な美術作品を通じて、日本の歴史の中で大きな節目となる時代に生きた人々の心の鼓動を感じていただければ幸いです。