画家が素描をするという行為は、ふつう本画を制作するための第一歩と考えるのが一般的です。本画制作のための過程として描かれた素描は、ときに作家や作品を理解するための重要な材料となり、美術館では貴重な資料として収蔵されています。
では、資料としての素描の価値とは別に、絵画としての魅力はどうでしょうか。本画は画家の表現手段として、意図を持って整理され構成され完成した作品です。一方素描は、対象の正確な描写やその場の印象を描きとめることを第一の目的とするため、生き生きとした臨場感があることが魅力と言えるでしょう。
今回は当館収蔵作品の中から、素描をはじめ、スケッチや淡彩、下絵などの作品をピックアップして展示します。勢いのある筆遣いの中に作家の個性がキラリと光る逸品をどうぞご覧ください。