日本の焼き物のなかで、いま、もっとも人気のある焼き物といえば、古陶磁では桃山の陶芸、現代陶磁では魯山人の陶芸に尽きるといってよいでしょう。このふたつの焼き物を一堂に合わせて、日本人が独創した芸術感覚の魅力を堪能していただこうという企画が、ここに紹介する「桃山陶芸と魯山人展」です。
この数年来、魯山人の評判が高まる一方で、各地で展覧会が開催されておりますが、魯山人陶芸の源を桃山陶芸にもとめて、比較する展示が試みられることが普通でした。今回は、この比較をやめて、桃山陶芸は茶の湯の道具として、魯山人陶芸は料理の道具として、このふたつの焼き物がもっている創作のおもしろさを、存分に愉しんでいただこうとするところが、要点となっています。
桃山陶芸、とくに茶陶とよばれている焼き物も、魯山人の焼き物も、普通常識でいう工芸の概念にはとてもおさまらない破格を旨とした工芸でした。「一つとあって、二つとはない」という独創を旗印にかかげて、当意即妙・豪放闊達な作為を縦横に駆使した結果、今いう芸術の概念に与する先進性をもっていました。その痛快な作風が、21世紀に生きる私たち日本人をとても刺激します。さらに、江戸時代の初頭には、技がきいた磁器を焼いて世界を潤していた中国の景徳鎮窯が、なんとこの芸術感覚の焼き物を、日本の茶人からの注文に応えて作ってくれました。ここには中国人が理解した日本の芸術を垣間見ることができます。
本展では、第一室に、魯山人が手本とした桃山の茶陶、および日本人が景徳鎮窯に発注した古染付・祥瑞・南京赤絵などを、最高レベルで選択して、茶の湯世界の演出の妙を展示します。特に、国宝の「志野茶碗 銘卯花墻」のほか、志野・織部・伊賀など重要文化財三点が加わります。
また、第二室では、日本料理が映える魯山人陶芸の粋を取り合せ、合計154点の作品を展示いたします。