国宝「源氏物語絵巻」公開の期間に合わせて、蓬左文庫展示室では「源氏物語の世界」と題した企画展を開催します。紫式部(生没年未詳)によって著された『源氏物語』は、成立以来愛読され、数多くの写本が作られました。この転写の過程でさまざまな異本が生じ、藤原定家(一一六二~一二四一)によって校訂された青表紙本系、源光行(一一六三~一二四四)・親行(生没年未詳)父子の校訂になる河内本系および、これらに属さない別本系に大別されています。
本展覧会では肥前平戸家に伝来した別本系の「源氏物語 松風」をはじめ、藤原定家の重要文化財「源氏物語 早蕨」や三条西家本などの青表紙本系、河内本系の最古写本であり、近年の研究で光行・親行父子が校訂のために用いた本であることが判明した重要文化財「河内本源氏物語」など、『源氏物語』の代表的諸本を展示します。
また国宝「源氏物語絵巻」に次ぐ現存二番目に古い「源氏絵」として知られる重要文化財「源氏物語絵詞」、土佐光則筆「源氏物語画帖」など絵画化された『源氏物語』の諸作品を合わせて展示し、その享受の歴史をたどります。