「悪い絵」とは、どんな絵でしょうか? 「良い絵」の反対? では、「良い絵」とは? そもそも絵の良し悪しの判断基準はどこにあるの? こうした疑問を感じたことは、ありませんか?
現在美術館に所蔵されている作品が全て、発表当初から評価されていたわけではありません。第二次大戦中「退廃芸術家」と称され、戦後に評価の高まったクレーやエルンスト。土田麦僊 (ばくせん) に「穢い絵」と言われ展示を拒否された甲斐庄楠音 (かいのしょう ただおと)。あのボナールも、かつてはピカソに酷評されていました。これらは、美術の表面的な価値が、時代や評価者によって変わりうることを示す端的な例といえるでしょう。
一方「悪」という言葉を辞書で引くと、この言葉には様々な意味が込められていることがわかります。「宿命の女 (ファム・ファタル)」のように私達を誘う妖艶な悪女。普通の人とは違った個性を主張する不良 (ワル) への興味。いけないと分かっていてもちょっぴり憧れてしまう、ダークな世界もあります。そう、「悪」には、決して「悪い」意味だけが込められているわけではないのです。
本展では、綺麗で心が和むだけではない、美術の不思議な魅力を、「悪」というキーワードに沿って、さまざまな角度から探求します。