彩色された木彫による着衣の半身像に大理石の潤う瞳が印象的な舟越桂(1951年盛岡市生まれ)の初期の肖像彫刻は、力強い磁力で彼の彫刻世界の入り口へと私たちを導いてくれます。その尽きることのない創造力は、人間の存在を大きな山のイメージに重ね、人間の不思議さや深さを追いかけ続けるうちにスフィンクスのシリーズに到達します。この過程で舟越は、20年以上試みることのなかった裸体像を再び表現するようになり、西洋の美の規範と自国の文化とを時間や場所を越えて統合していきます。
本展覧会では、初期から最新作までの流れをふまえつつ、自由な発想が生んだ異形の姿が展開する創造の醍醐味を、彫刻、素描、版画あわせて約70点によって紹介します。