本展覧会は、小山登美夫ギャラリーでの個展としては今年3月ヒカリエでの展覧会以来、5度目の開催となります。出展作は、大きな壁掛け作品約10点、小さな壁掛け作品約20点、床置き作品約2点、全て最新作で構成されます。
今回の展覧会によせて、菅は次のように語ります。
「あるものを見るのは、それほどムズかしくないが、もののものたり得る内面性と本質を知ることは、なみ大抵ではない。また、いわゆる「作品」を表すことは、それほど困難なことではないが、「作品」の「作品」たり得る現実化された独自の存在根拠や場(空間)の内在化を身の内に取り入れることは、なかなかムズかしい。ムズかしいけれど、表すことをつづけられるのは、知覚する空間やものの領域には、<志向性> というものがあるからである。表わすニンゲンといえども、なんの目安もなく動けない。なんらかの作業ができるのは、ものの向こう側にも、空間のこちら側にも、なにかあるのではないかと思わせる <志向性> があるからである。あるだけでなく <志向する> ことによって、別種の存在するものや領域がかい間見えるということだろうか。いわば <志向しなければ> なにも見えないのである 菅木志雄」
また、菅作品について、美術評論家の松井みどりはこう評しています。
(菅作品を鑑賞することにより) どれほど知識を積み上げても埋められない知覚の隙間が世界には存在し続けることの実感が、尽きることない自由の感覚をもたらした。
(松井みどり「菅木志雄の方へ:生成する世界を捉える仕組み」、菅木志雄―カタログ、小山登美夫ギャラリー、東京画廊、2006年)
国内外でもの派への注目が改めてクローズアップされている昨今にあって、菅はなお、ものや空間の本質を追究し、志向し、表現し続けています。今も現在を生きている歴史的なアーティストの、色褪せることのない自由な感覚による最新作を、同時代に生きる多くの方々にご覧いただきたいと思っております。ぜひこの機会にお越しください。