濱田能生に私は今思えばその晩年に二度しか会っていない。
初対面の時、世の中にはこんな天然自然な人物もいたのかという驚きだった。彼の作品は前から注目していて、いつか手に入れたいと思っていた。そして比較的大ぶりな壷を持つことができた。この作品は手強い相手で、誰にでも好かれたりはしない。しかしガラス器を越えた存在感があって、迫ってくる力にたじろいでしまうものがあるのだ。能生の作品は他にも美しいもの、魅力あるものが沢山ある。けれども私はこの種の壷が一番彼の作りたいと思っていたものではないかと思う。能生は急逝してしまった。世の中は忙しいから、彼のことは忘れてしまっている。このまま埋もれてしまっては残念に思う。早く正当な評価をする人があらわれないだらうか。
2015年 早春 柚木沙弥郎