600種類以上の竹や笹が存在している日本では、竹は古来より日本人の心に触れ、愛されてきました。静かな山中にたたずむ竹、風に揺られ鳴る笹の音は心を落ち着かせる音色です。また、美しい緑色で凛とした姿は、日本人の美の源のように感じられます。
竹は丈夫で弾力性があるため、昔から日常生活に広く用いられてきました。笊(ざる)、籠をはじめ茶道具、武器、武具、竹垣や家の内部などの建築物までにみられます。竹工芸の発展は、茶道が隆盛したことに深い関係を持っています。茶道が始まるまでは日常の雑器にすぎなかった竹細工を茶席に取り入れ、床の間に置いたのは、身近にある美しい物を見過ごさない茶道人の感性の鋭さによるものだといえるでしょう。
今展では、生野祥雲斎が昭和初期に制作した「茶合」(小さな茶壺から茶葉を取り出し、茶瓶に入れる際に使用する茶器)や花籠といった茶道具としての竹工芸作品を中心に、名品「怒涛」までを紹介します。さらに、長男徳三氏の協力を得て、生野家ゆかりの茶道具をエピソード資料とあわせて展示します。