近年、3Dプリンターというとても便利な物が一般家庭にも手が届く価格で普及してきました。そこで私は、うーん困った。パソコンと3Dプリンターがあればちょちょいのちょいでワックスを思い通りのデザインに作り鋳造専門店に持ち込めば誰もが簡単に思い通りのアクセサリーが出来てしまうのではなかろうか。古い方法で彫金をしている私は何を作るべきか..........
昨年ショーケースギャラリーの展示のテーマに「水/water」で作品を制作する機会がありました。その時に制作した作品の技法で、溶かした熱々トロトロの銀を水の中に落し入れます。水に落ちた瞬間に銀がアルミホイルの様にぐしゃっとなり自分ではまったくコントロールの出来ない予測不可能な水がデザインしてくれた物が出来上がりました。これは彫金の技法としてはとっても初歩的で簡単なのですが、何だか予測不可能な所が好きでいくつも制作しました。
そして今回の個展のテーマは「銀×和紙×水」。水の中に、水と熱に強い和紙(阿波の強制紙)を入れてそこに溶かした銀を落とし入れる。すると和紙の皺の間に入ったり平らな所に落ちたりして和紙が銀にとって、とても心地のよいクッションになり、水だけの中に落し入れた時とはまた違った少し柔らかい感じの物が出来上がります。水の温度、銀を落とす時の距離、タイミング、和紙のくぼみの形。一つ一つが偶然に出来上がった形。同じ物が二つとない形。それらを私が少し手を加えて身に付ける物に仕上げました。
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