留学先のパリで超現実主義(シュルレアリスム)を目の当たりにした福沢一郎(1898~1992)は、1930年以降、鋭い諷刺精神に基づくコラージュ絵画に取り組み、日本の洋画壇に強い衝撃を与えました。一方、短い画業の中でさまざまに作風を変貌させた三岸好太郎(1903~1934)は、その晩年、蝶や貝殻をモティーフに詩情豊かな夢幻の世界を繰り広げています。
二人の作品はともに独立美術館協会展に発表され、超現実主義的な絵とみなされましたが、手法や内容の点で大きな相違があります。また、二人が超現実主義的な作品を制作したのは限られた一時期のことでした。
本展は、福沢一郎と三岸好太郎の作品を通して日本における超現実主義のすぐれた受容例を紹介するとともに、それぞれにとっての超現実主義の意味を探ろうとするものです。