ベルナール・ビュフェの作品は、ジャズ喫茶で展示されたり、マッチ箱やレコードジャケットなどの印刷物に使用されたりと、1960年代の日本でも人々の生活に寄り添う身近な芸術として親しまれていました。ビュフェの作品が、このように広く知られるようになった背景の一つとして、ビュフェが版画作品の制作に取り組んだことがあげられます。描いた一点のみが作品である油彩画と異なり、版画は一つのイメージを複数点つくり出すことができるという特徴があります。
油彩作品だけでなく、すぐれた版画作品をも制作した画家をフランスでは“パントル・グラヴール”と呼びますが、ビュフェはまさしくパントル・グラヴールとして、ドライポイントやリトグラフという技法の版画作品を生涯にわたり制作しました。そして、ポスター芸術や、文学作品とのコラボレーションによる挿画本の制作など、画家として表現の幅を拡げていったのです。
本展では、版画作品の他にも、挿画本やポスター、ドライポイントの銅原版などを展示し、ビュフェの版画作品の魅力とイメージの拡がりをご紹介いたします。