16~17世紀の俵屋宗達、17~18世紀の尾形光琳、18~19世紀の酒井抱一。江戸時代、およそ100年ごとに、直接の師承関係ではなく私淑というかたちで、琳派の系譜は継承されてきました。光琳は宗達の、抱一は光琳のスタイルとセンスを、時空を超えたシンクロニシティーによって血肉化し、コンテンポラリーな創造を成し遂げたのです。そして、20世紀においては、硬直化、保守化した日本画壇ではなく、むしろ先鋭的なデザインの世界にこそ、琳派のエッセンスが受け継がれています。戦後のデザイン界を牽引した田中一光は、1960~70年代に琳派をはじめとする日本の古美術を巧みに引用したポスターを多数制作しました。彼こそが、まさに「20世紀琳派」というべき存在だったのです。では、21世紀に琳派はどのように受け継がれるのでしょうか。本展では、第一線で活躍するデザイナー10名に琳派からインスパイアされたポスターの制作を依頼し、一堂に展示します。「21世紀琳派」の競演をお楽しみください。(山下裕二/美術史家・明治学院大学教授)