本展は、1970年代から最近にいたる写真芸術の魅力を、アジア・アフリカ・アメリカ・ヨーロッパのアーティスト約40組の作品で紹介するものです。多様な文化的・社会的背景のものとで、本展出品のアーティストが共通言語としての現代美術にどう取り組んでいるのか、その点も本展の見所です。同時に本展のテーマは、《写真》の本質と魅力を《時間》という視点から検証するところにあります。
一般的に私たちの日常の生活や社会活動は、《時計》と《暦》という数値に還元される時間とともにありますが、私たちの生にとって、《時間》はもっと多様で複雑なものです。展覧会の英語タイトル「Time Present」は、T.S.エリオットの詩句から採ったものです。エリオットは過去・現在・未来を区別しない独特の時間概念を志向していましたが、文学のみならず、哲学や文化人類学などさまざまな領域で《時間》は考察されてきました。一方、写真は《時間》を切り取ってイメージに定着します。写真を自らの表現手段として使うアーティストは、さまざまな《時間》のイメージを提示しています。
この世に《写真》が誕生して200年足らず、この間に写真は生活と社会の隅々にまで浸透しました。この20年ほどの間にデジタル化が進行し、写真は一層身近になっただけでなく、それなしの生活も社会も想像できないほどになっていると言えます。私たちにとって《写真》とは何なのか、それを再考するうえでも本展はよい刺激となることでしょう。