震災から20年がすぎた。私が関わっているピントゥーラの活動を見守ってくている熊谷さんからの、今回の個展のお誘いがあった。熊谷さんの中に20年の節目のようなものがあったのかはわからない。震災直後にアートスペース虹で個展をした。ピントゥーラの活動を猛スピードで走りながらの個展は、決して良い出来の個展ではなかった。虹での個展はあれがスタートで、今回10回目となる。
何が変わり、何が変わっていないのか? 20年の歳月の中の人との出会い、別れ、モノ、言葉、出来事と様々な出会い。その時はとてもつらい経験も、時が経つとGiftとなって自分に残る。出会い、出来事から受け取った多くのGift。そして、歳月の積み重ねとともに、日常の中のささやかなGiftに気づくことが年々多くなっていること。
9月に石巻の子どもたちとピントゥーラの人型のワークショップをする。そこに、20年前の阪神の子どもたちの人型も展示をする。20年前子どもたちとその瞬間寄り添い、楽しい時間を一緒に過ごすことを使命と感じ、繰り返し行ったワークショップ。子どもたちの未来への種まきのつもりが、私たち大人へのGiftの時間であったことに随分たってから気づく。個展の作品の中に震災の子どもたちの絵が出てくるわけではない。隠喩するものがあるわけでもない。ただ、20年目の記憶として作り手の私の中にある。
今回の作品は植物染料を使用している。時間とともに消えて無くなっていくかもしれない。それも良いと思う。美しい葉の形は小さな虫たちの美しい仕事。最近、出会ったアメリカ人のアーティストから、「日本の染織技法の中にある、日本人の哲学を学びたい」という、言葉のGiftを受け取る。染めの仕事の中に、多くの古い記憶や経験、思想が内包されていることに気付く。
最近とても不思議に感じる。誰かにGiftを渡すつもりで行ったことが、なぜか自分がGiftを受け取っている。
アートスペース虹の熊谷さんとの出会いに感謝を込めて
いまふくふみよ