今野忠一(1915-2006)は山岳風景画家というジャンルを切り開き、日本の名山を描き続けました。忠一が活躍した時代は、戦後の日本画改革期と重なり、日本画の形状が大型化し、厚塗り、西洋絵画表現の導入が行われた時代でもありました。この変動期の日本画の世界で、暗色を取り入れながら、陰影法や遠近法をなるべく使わないように試みました。この試みによって日本画の要素を失わないギリギリの表現を確立し、日本画改革の旗手のひとりとして活躍しました。忠一は風景をとおし、人間と自然との対話を主題とした数々の名作を生みだした後、日本の名山を描きました。さらに最晩年は実景から入った心象風景を多く描き、心の山河を表現しました。
2015年は忠一の生誕100年という節目の年になります。この機会に代表作を展示公開し、その功績を顕彰します。