70年前の8月、原爆投下という惨劇に見舞われた広島では、高台から撮影された写真などによって、壊滅の実状が明らかにされました。その後、建築家の丹下健三によって平和記念公園を含む都市計画として提示された、鳥の目で俯瞰 (ふかん) したプランは、広島が平和都市として象徴的な存在となっていくための未来へのビジョンを明示しました。本展では、空から見つめた喪失と再生、二つの広島の姿を出発点として、ある対象を高みから一望する「俯瞰」の視点でとらえた都市や場所の過去を振り返り、現在を見つめる表現を紹介します。
普段は、目線の高さで見ている場所や物事を、高いところから見渡してみると、それまでは気づかなかった部分が見えるだけでなく、その場所や物事の全体像が見えてくるでしょう。混迷を極め、先行きに不安を覚える今の時代においてこそ、事態の把握を可能にする「俯瞰」の視点は、私たちの進むべき方向性を見極めるための手がかりを与えてくれるでしょう。