新井コー児は、昭和40年代の日本を舞台に女子高生や動物たちが自由奔放に戯れる世界を描き続けています。たち並ぶ電柱や銭湯のえんとつ、木造校舎に畳部屋、ちゃぶ台の上の吉田拓郎のLPジャケットや日本酒「八海山」と、画面を満たすのは、どれも作家本人が郷愁を抱き、愛し好んできたアイコンばかりです。それらを舞台設定に、屈託のない女子高生が縦横無碍 (むげ) にたちまわるイノセントな世界こそ新井コー児独自のものです。よく見れば非現実的でちょっと怪しく、ドキッとするシチュエーションもありますが、なぜか自然で、見る人に警戒心や緊張感を与えることがありません。「私の作品を鑑賞してくださった全ての方々に元気な笑顔になってもらいたい」という作家の言葉からは、描かれる登場人物以上に無垢な精神性が感じられます。
本展では、新井コー児が大学卒業後20年にわたって制作してきた、ノスタルジックな雰囲気を漂わせながらもポップで自由な魅力を放ち続ける油彩画、日本画、銅版画と立体作品を、新作も含めて紹介します。
木戸をくぐったその先の横丁で開催されている地元のお祭りのように、新井コー児画業20年目の“独り文化祭”をお楽しみください。