四季の明確な日本では、古くから折々に変化を遂げる自然の様子を様々な手法で表現してきました。移り行く自然の風景を絵絹にとどめるだけでなく、情景を思い浮かべては和歌や短歌でも思いを表現してきました。とりわけ、秋という季節は、木々が紅葉し、菊や秋桜などの様々な植物が賑やかに咲き誇り、柿や葡萄の果物などが実る時期でもあることから、人々はそれらを格好の題材として表現してきました。
横山大観の「秋風」は、秋の澄みきった空気を片ぼかしの技法で巧みに表現しており、また、奈良の情景を描いた澁澤卿の「晨暉秋影」は、色付いた紅葉一枚一枚を細部まで正確に描写することで、秋の深まりを感じさせます。さらに、琵琶湖沿岸の景勝地を描いた冨田渓仙の「石山秋月」は、月明かりに照らされた石山寺が非常に印象的です。
本展覧会では、先人たちも愛でた紅葉を中心に、秋を象徴する作品をご紹介いたします。是非この機会に芸術の秋にふさわしく様々な角度から捉えた秋の情景をご覧いただければ幸いです。