1982年9月25日に開館した三重県立美術館は、今年33回目の秋を迎えます。美術館の顔ともいうべき収蔵品の数も順調に増え続け、当初は400点足らずであった作品数も、5000点を超えるまでに成長しました。
三重県立美術館の作品収集方針は、以下の4本の柱で構成されています。
(1) 江戸時代以降の作品で三重県出身ないし三重にゆかりの深い作家の作品。
(2) 明治時代以降の近代洋画の流れをたどることのできる作品、また日本の近代美術に深い影響を与えた外国の作品。
(3) 作家の創作活動の背景を知ることのできる素描、下絵、水彩画等の作品。
(4) スペイン美術。
これらの方針の下に購入したり、あるいは寄贈を受けたりしてコレクションとなった作品たちは、「美術館のコレクション」や「柳原義達の芸術」と題されて、常設展示室や柳原記念館において皆さんにご覧いただいています。一見同じような配列に見えても、それらは一年のうち4回展示替えが行われ、企画展示と連動するテーマを設けたり、地元作家の顕彰のために特集展示を組んだりするなど、常に多種多彩な内容でお楽しみいただけるよう努めています。
芸術のジャンルは、絵画、彫刻、工芸など多岐にわたります。加えて、近年はどの分類に属さないような新たな芸術も次々に誕生し続けています。芸術を取り巻く流れが速さを増していく中で、県立美術館として、何を展示し、何を収集するかということについて、一層広い視野と柔軟な姿勢、そして何よりも来館者からの理解が求められてきているでしょう。
美術館のコレクションの魅力のありかを考える時、突き詰めればそれは「いつも/そこに」あることではないかと思い至ります。このことが生み出す親近感や安心感はコレクションの何よりの強みです。「いつも/そこに」あるからこそ、変わりゆくものを映し出す鏡でありたい。コレクションを守る美術館スタッフはいつもそれを願っています。