公益財団法人常陽藝文センターでは郷土作家展シリーズ第238回として、「近代歴史画の残照 羽石光志展」を開催いたします。
日本における歴史画は、開国に始まるナショナリズムの急速な高まりを受けて、明治10年代後半以降、昭和初期まで重要な絵画テーマとして描かれていました。西洋文化の流入によって歴史的な考察や躍動的な絵画表現など歴史画に必要な要素が充実したことも、その流れを後押ししました。
日本画家・羽石光志(本名・弘志)は明治36年栃木県に生まれました。幼い頃から馬など身近なものを描き、13歳のころから歴史画家・小堀鞆音 (ともと)(文久4年~昭和6年)に師事しました。20代前半には当時流行していた少年雑誌の挿絵画家に推薦され、品格と勇壮さを兼ね備えた羽石の挿絵は瞬く間に人気を得ました。本名の「弘志」で続けた出版関係の仕事は一生涯にわたりました。
羽石は35歳の時に、日本画家・安田靫彦 (ゆきひこ)(明治17年~昭和53年、文化勲章受章者)に師事し、それを機に院展への出品を始めます。初入選の翌年には早くも日本美術院賞を受賞、以後多くの受賞を重ね、昭和31年には日本美術院同人に推挙されました。
羽石は有職故実を徹底して研究した小堀に歴史考証の大切さを学び、歴史画の大家として知られる安田靫彦にはその高潔な作品と人柄に生涯影響を受けていたといいます。戦後になって歴史画が衰退していくと、羽石はモチーフに悩むようになり、家族をモデルにした洋画風の作品にも挑戦しました。しかし羽石の本分はやはり歴史画にあり、舞台を日本古代や中国文明などにも広げながら、抑制された人物表現に歴史上の激動や悲劇を込めた歴史人物画というべき作品群を残しています。また母親が茨城県の出身だった縁で茨城県美術展覧会にも出品、審査員も務め、本県の日本画界にも貢献しています。
今展では羽石光志の優品14点を二期に分け、前期に日本の歴史をモチーフとした作品を、後期にはそれ以外のモチーフを描いた作品を中心に展示いたします。
公益財団法人常陽藝文センター