20世紀美術の巨匠・カリスマの一人であるルネ・マグリット(1898-1967)が描いた世界は、今なお私たちの想像力を刺激して止みません。その作品に繰り返し現れる、パイプ、りんご、山高帽、鳩などの身近なモティーフは、画面の上で自由な空想のもとに置き換えられ、表現されます。
例えば、天空に浮かぶ城塞、化石化した光景、密室に幽閉されたようなりんご、メタモルフォーズ(変身)していく人体、そして飛翔の象徴としての鳥のシルエットなど、それらは言葉とイメージの関係、オブジェの擬人的ユーモア、重量や時間の置き換えや逆転を、「だまし絵」的な手法で魅せながら、みる者にある種の謎と物語を悟らせます。そして、そうした作品に出会えた時こそが、画家とその作品をみる人との共感が時空を超えて立ち上がる、まさに「“超”・現実的」な瞬間でもあり、それこそがマグリットの作品の魅力でもあります。
4年前の1998年、ブリュッセルのベルギー王立美術館で生誕100年を記念した大規模な国家プロジェクトの回顧展が開催され、改めてその独自で質の高い芸術が再認識され、世界的に大きな反響を呼びました。ベルギー王立美術館の監修を得て実現される本展覧会は、日本発公開作品を数多く含む油彩・グワッシュなど総計90余点の絵画作品群により、マグリットの不思議なイメージの世界を余すところなく伝える最上の機会となることでしょう。会場の「心の琴線」に響く作品との出会いをお楽しみ下さい。