日本がまだ占領下にあった1951(昭和26)年、全国に先駆け公立の近代美術館として開館した神奈川県立近代美術館の鎌倉館は、2016(平成28)年1月末をもって展覧会活動を終了することとなりました。鎌倉館の最後の年となる本年度は、「鎌倉からはじまった。1951-2016」展と題し、鎌倉での約65年にわたる活動を三期に分けて振り返る展覧会を開催いたします。その第二弾となる「PART2:1966-1984 発信する近代美術館」では、開館15周年を迎えた1966年から鎌倉別館が開館する1984年までの約20年を取り上げます。
1966年、建築家・坂倉準三による旧館の東側に、同じく坂倉による新館が増築されました。池に面したガラスのカーテンウォールを特徴とする、建物の内部にいながら外部の自然との一体感が得られる透明性の高い空間が作られたことで、開催される展覧会の幅が広がりました。クレーやムンクといった本格的な海外展が開催される一方で、近代日本美術史を再発見・再検証する意欲的な展覧会を企画、また新進の彫刻家の展覧会を積極的に行ったのもこの時期です。さらには県展や青年美術展の会場として、幅広い層に向けた普及の場ともなりました。
第2会場となる鎌倉別館では、「版画の部」としてこれまでに開催された版画展の出品作家を紹介します。「ルオー『ミセレーレ』版画展」、「フリードランデル・浜口陽三・南桂子版画展」、「中国木版画展」など、当館では多様で独自性のある版画展を開館当初より行ってきました。そのなかから精選した約90点を展示するとともに、棟方志功の幅6メートルを超す大作《花矢の柵》を、約10年ぶりに公開します。