鋤田正義(1938~)は、デヴィッド・ボウイやT.REX、YMOや布袋寅泰ら国籍を超えてミュージシャンから圧倒的な支持を受けているのをはじめ、広告写真、テレビコマーシャル、映像作品など幅広いフィールドで常に第一線で活躍し続けている写真家です。70年代から現在に至るまで深い信頼で結ばれているデヴィッド・ボウイが冷戦下のベルリンで録音した名盤『LOW』に収録された「SOUND & VISION」をタイトルに冠した展覧会は、2012年夏の東京都写真美術館を皮切りに福岡、大阪、舞鶴と巡回、人気をさらに拡大し、存在感を確固たるものにしました。
それから1年余り、“RETROSPECTIVE”という形で全仕事を俯瞰した鋤田正義が“写真論”というコンセプトで自己の世界をまとめ上げる展覧会が開催されます。
1956年頃、高校時代に撮影した母親の写真からはじまり、リー・モーガンなどのジャズ・ミュージシャン、寺山修司の天井桟敷、ニューウェイヴのミュージシャンたちから、現代の俳優やアーティストに至るまで対象は多岐にわたり、撮影した場所も世界中の都市にまたがっている鋤田の写真。それはビートニクのような風貌をした鋤田の永遠に終わることのないロードムーヴィーのようなものであり、“音の響きと映像の不思議さ”が感じられます。
今回の展覧会では、鋤田正義の記憶と心象風景が観る者の感性を飛翔させてくれます。