宮本三郎(1905-1974)は、1950年代、昭和洋画壇を牽引する画家として活躍する一方『アサヒカメラ』や『カメラ毎日』など写真雑誌から依頼を受け、表紙写真を構成する仕事にも取り組んでいました。構図やモデルのポーズについてアイディアを出し、撮影に使用する小道具を選定するなど、写真家とのやりとりを重ねながら1つの作品にまとめていくその仕事ぶりは、今でいうアートディレクターやスタイリストといったところでしょうか。どこか緊張感の漂うモダンな作風の写真は、宮本によってモチーフの配置や色彩のバランスが考え抜かれたものです。宮本は自らの絵画表現を追求する中で鍛えた造形に対する知識や理論を、写真表現にも応用していました。『アサヒカメラ』誌上で木村伊兵衛と連続対談を行った宮本の言葉からも、絵画制作を通じての経験に裏打ちされた写真作品への鋭い洞察をうかがうことができます。また、宮本自身が被写体になったこともあり、中村立行をはじめとする写真家が、真摯に制作に取り組む宮本の表情を捉えています。
本展では宮本三郎と写真家との関係に焦点をあて、知られざる宮本の写真の仕事を取り上げるとともに、1950年代の作品を中心に油彩、素描作品もご紹介いたします。