わが国を代表する日本画家、平山郁夫画伯は仏教東漸、東西文化交流の道であるシルクロードを100回以上歴訪し、ライフワークとして、現地の寺院や遺跡、風物を数多く描いてきました。その深い精神性に根ざしたロマンチシズムあふれる作風はわれわれを魅了してやまず、時空を越えて聖なるものへの畏怖と憧憬を絶えず誘い続けています。
平山氏は取材と並行しつつ、その創作の源泉としてシルクロードの古美術品を30年の歳月にわたり収集してきました。これらのコレクションは、世界一級の美術品としての価値もさることながら、稀少な歴史的資料として国内外の考古学・美術史学・博物館関係者から極めて高い評価を受けており、学術面における貢献も多大なものがあります。
この展覧会では、貴重かつ膨大な「平山コレクション」の中から、ガンダーラ仏教彫刻や、陶器、織物、壁画、金属工芸品、コイン、化粧皿など紀元前4世紀から9世紀にいたる逸品、約220点を一堂に展示します。今回はとりわけその白眉ともいえるガンダーラの仏教美術に焦点をあてて、西はシリアのパルミラ都市遺跡から、東は新橿ウイグル自治区の仏教寺院におよぶ、多彩な文化遺産の華麗典雅な様相を概観することで、ガンダーラ芸術の豊かな国際性を浮き彫りにします。