各地を旅行しようと思った時に、その土地のみどころとしてまず思い浮かべられるのが「名所」でしょう。名所といえば、歴史を感じさせる旧蹟、美しい景色を見せる景勝地、大きなものや変わった形のものなど、ほかでは見られない珍しいものなどが挙げられます。北陸新幹線が開業し、富山にも多くの観光客が訪れていますが、富山駅に降り立った観光客に、「近くのみどころは?」と尋ねられて、富山の人は何と答えるでしょうか。富山の人はつい「富山には何もない」「たいしたことない」と言ってしまいがちです。
歴史を紐解けば、江戸時代の富山名所の代表は神通川に架かる船橋でした。舟を鎖でつないで橋にしたもので、その雄大な眺めが全国的に知られていたのです。それでは、明治時代以降はどうでしょうか。出版された案内誌などには、城下町富山、薬都富山といった歴史に裏付けられた旧蹟や、豊かな神通川の流れ、花見も楽しめる行楽地である呉羽山などが紹介されています。一方、「新名所」という言葉もあるとおり、近代の名所には新しいものも登場します。鉄軌道や富岩運河など、近代都市として発展する姿も富山のみどころとしているのです。
本展では、案内誌や絵はがきなどから、近代富山はどこを名所として認識していたのかをたどり、現在の富山の魅力をさぐる契機としたいと思います。