6世紀に大陸から朝鮮半島を経由して、わが国に伝えられた仏教。その当初から日本人に敬虔な気持ちと深い感銘を与え続けてきた「仏像」は、全国津々浦々にまで受け入れられ、地域に暮らす人々の心の支えとなってきました。
古代から中世、そして近世へと千年におよぶ時間のなかで、それぞれの時代を生きる人々のさまざまな「祈り」が反映されて、仏像はかたち作られました。
この展覧会では、当館の立地する石見地域を中心に、隣接する出雲(島根県東部)、安芸(広島県西部)、周防(山口県東部)、長門(山口県西部)をふくむ、中国地方5県の仏像により、時代時代に特徴的ないくつかのテーマに沿って、この地域に生きた人々の祈りのかたちをご覧いただきます。
人間の力をはるかに越える自然の力を、地震や豪雨などの大災害によって知ることの多い昨今、人々の祈りの気持ちはますます強まっているようです。この機会に、ふるさとの仏像にみられる、救済の精神に根ざした確かな造形性にあらためて目を向けていただける展覧会となれば幸いです。