細い足で立ち上がる壺や箱、柔らかな白い釉薬に包まれた陶彫、自作の詩が添えられた水彩画―不思議な存在感を放つこれらはすべて、京都の陶芸家、藤平伸 (ふじひらしん 1922~2012年)の作品です。
藤平は京都の陶磁器生産の中心地・五条坂にある藤平陶器所(現・藤平陶芸)の次男として1922(大正11)年に生まれました。創業者で父の政一は、近代日本を代表する陶芸家のひとりである河井寛次郎とも深く交流した、進取の気風に富んだ製陶家で、「伸」という名は河井により名付けられたものです。30代より作家活動をはじめた藤平は、日展特選、日本陶磁協会賞受賞など評価を高め、その作風から陶の詩人とも評される独特な世界を深めました。実用の器からオブジェや陶彫、書画にいたるまで、藤平の作品には伸びやかな形の中に、創作を楽しみ、人生の機微を謳うような豊かな詩情が漂います。没後初の回顧展となる本展では、初期から晩年まで100点余りの作品により、その魅力をご紹介いたします。 (会期中、展示替えあり)