このたび、横須賀美術館では「上條陽子 tabula rasa (タブラ ラサ) ―白紙―」を開催いたします。 上條陽子(1937-)は、17歳で画家を志し、当時横須賀にあった清泉女学院を2年で中退して以降、独学で制作を続けています。1978年、女性としてはじめて安井賞を受賞した当時は、人間の苦悩や不安を表出した表現主義の色濃い作品を生み出していましたが、1986年に大病を患い、生死をさまよう大手術を経て、作風は一変しました。激しく踊るダンサーの身体や音楽のリズム、生き物などをテーマとした作品からは、生命の儚さや躍動感、一瞬のきらめきが溢れるようになりました。また、絵画の制作の際にコラージュの技法を用いるようになり、弾けるような色彩や形態は、画面の外へと飛び出していきました。 1999年以降は、パレスチナとの運命的な出会いにより、豊かな色彩は重厚感と静謐さを兼ね備えたモノトーンへと変化していきます。 本特集では、ダンスや身体をテーマとした1980年代後半の作品や2000年以降に制作された重厚なモノトーン作品に加え、会場全体を使った、白を基調とする新作のインスタレーションも展示します。第一線で活躍する女性画家の、多彩な歩みをご覧ください。