木漏れ日を浴びる睡蓮、風に揺れる積藁、そして、穏やかな海に沈みゆく夕日。モネがそこに重ねた色彩は、柔らかく溶け合いながら、わたしたちの心の奥へと豊かに響いてきます。ルノワールの描く人物は周囲をたちまちその華やぎで満たし、セザンヌの染み入るような筆触の連なりは穏やかな空気の震えを感じさせます。彼ら印象派の画家たちが描いた作品の数々は、それを見るわたしたちの心を憧れの思いで包み込みます。
続く時代の画家たちは、さらに個性あふれる絵画を生み出しました。ルオーの描く重厚な精神。ローランサンの描く女性や花の優雅さ。シャガールの心躍るような画面は一抹の悲しみを内包し、鮮烈な色彩を持つキスリングの画面もまた、どこかメランコリックな心情を伝えます。彼らの作品はフランス美術を豊かに彩り、醒めることのない夢を描き続けます。
本展は、日本のある収集家のフランス近代絵画コレクションから71点をご紹介するものです。これら名品の数々は、わたしたちの夢と憧れのつまった「芸術の国フランス」のイメージを鮮やかに映し出してくれることでしょう。