髙田郁さんの『みをつくし料理帖』に出会ったのは海文堂書店の閉店が発表されてからのことで、平野義昌さんや福岡宏泰(店長)さんからだった。一気に魅せられ通読、最終巻で海文堂が出てくると落涙したが前記の二人は号泣したという。それは余話にすぎず、全巻を通しての登場人物にすべて抱き込まれるように我がこととして重ねてしまった。嵌るとはこういうことだったのか。
「私には懇意にしていた物之本屋を助けられなかった悔いがあり…」
「坂村堂よ、もう海文堂のことで何時までもそうくよくよ悩むな」
(みをつくし料理帖シリーズ『美雪晴れ』より)
私たちも何時までも嘆くまい。平野さんの『海の本屋のはなし ―海文堂書店の記憶と記録』を最後として。 島田 誠