近代国家を統率した皇族・政治家たちの姿、急激に変貌していく都市の景観、洋服などハイカラなファションを身にまとう女性たち、頻発する事件、災害、そして戦争・・。明治の世相・文化、人々の営みを描き伝えたものに、「石版画(リトグラフ)」があります。
石版画の技術は18世紀末のドイツで発明されましたが、ほかの印刷技法のような労力や熟練を必要とせず、しかも緻密で陰影に富む表現を可能にしたので、またたくまに世界中に広がりました。日本では幕末から印刷が試みられ、維新後は大蔵省や陸軍などごく限られた官庁で用いられていましたが、やがてやなどの業者を皮切りに民間での製作が本格化し、明治20年代には爆発的な流行を引き起こすに至ります。
写真を思わせる迫力と絵画作品のような洗練。激動の時代、多くの無名画工・著名画家たちを駆り立てた石版画。本展はその知られざる全貌がヴェールを脱ぐ、またとない機会となります。