みんなの「つぶやき」から生まれる「ものがたり」
これはいったい、何だろう?
美術館で作品を見るとき、私たちは何かを感じたり考えたりしています。ふしぎだなと思ったり、これは何だろうと思ったり、好きだ、きらいだ、きれいだ、気持ちわるい、と感じたり。そういった心の中に生まれることばは、「つぶやき」とよべるでしょう。もちろん「よくわからない」という気持ちも、つぶやきの一つです。
一方で、私たちのつぶやきとは別に、作品を作った人のつぶやきもあるでしょう。こんな作品が作りたい、こんな材料を使おう、というように、作品が出来上がるまでには作る人のたくさんのつぶやきが重なってゆきます。後々それは作品についての「おはなし」となりますが、私たちはそれを知らなくても、作品を楽しむことはできます。
この展覧会では、作品の中のおはなしを自由に想像して、新しい「ものがたり」を作ってみたいと思います。きっかけになるのは、これまで和歌山県立近代美術館で開いた展覧会で、子どもたちのつぶやきをたくさん集めてきた中西夏之さんの《コンパクト・オブジェ》という作品です。たまごのようなかたちの中に、ふしぎな物のかけらがたくさん詰まったその作品には、いったいどんなおはなしがあったのでしょうか。新しいものがたりは作り出せるでしょうか。
そのための素材となる作品が、この夏の展示室にはたくさんそろっています。一つの作品から出発して、つぶやきを手がかりに、おはなしを想像して、見る人それぞれがものがたりをつむぐ、楽しい展覧会です。