世界は今日も祈りで満ちあふれています。戦争のない平和な社会、健康で安定した暮らし、円満な家族関係、…。言葉や民族が違っても、より良い明日を願っているのは皆同じです。しかし、祈るときの様式や作法は千差万別といっていいほど多種多様です。それらの根底にあるのは、各地で伝統的に根付いている信仰や風習に他なりません。
本展では祈りの際に用いられるモノに焦点を当て、それぞれの用途やその背景にある信仰的な意味合いを紹介します。対象とする地域は、キリスト教の信者が多く分布するヨーロッパと北アフリカ、土着の信仰とキリスト教が互いに影響を及ぼしながら併存する中南米です。キリスト教の信仰や世界観がヨーロッパでどのように育まれ、異民族、異文化の地域で受容されたのか。そうした歴史的観点からも展示をご覧ください。また、人々の素朴な信仰心があらわれた民間信仰に関する資料も見どころのひとつです。
本展が「祈り」という行為の時間的、空間的な広がりを理解する一助になれば幸いです。