金沢区瀬戸に所在する昇天山金龍院(臨済宗建長寺派)は、南北朝時代に建長寺の方崖元圭(?~1383)が創建した禅宗の古刹です。境内には「金沢四石」の一つ「飛石」があり、六浦の鎮守瀬戸明神が飛来した霊地とされています。
江戸時代、岬として海に突き出た金龍院の裏山には、金沢八景の名勝を一望できる展望台としての九覧亭が設けられ、八景めぐりの旅人が必ず立ち寄る名所となり、その賑わいは昭和初期まで続いたのです。歌川広重もこの景勝をこよなく愛し、数多くの風景画を描きました。金龍院では広重の描いた浮世絵を版に刷り、旅人への土産物として頒布し、好評を博しました。
今回の展示は、金龍院に伝わる文化財の全貌を初めて公開するものです。彫刻・絵画・書籍を中心に、殷賑をきわめた金沢八景のすがたや、江戸時代の禅院の生活をうかがわせる資料、六浦藩関係の学問を伝える典籍など興味深い資料をご覧いただきます。