挿絵画家の生活に安住するか、それとも新たな道へ踏み出すか―。
出版業界が益々活況を呈した明治時代後期、売れっ子の挿絵画家として活躍していた清方は、人生の岐路に立っていました。幼い頃より慣れ親しみ、憧れでもあった文芸の世界で安定した地位を築いたものの、次々と舞い込む仕事に追い立てられるような日々を送っていました。そんな中、明治40年に第一回文部省美術展覧会(文展)が開かれる等、日本美術界には新たな潮流が生まれつつありました。日本画制作にも研鑽を積んでいた清方は、より自由な制作と生きがいを求め、日本画家という新たな道へと進むことを決意します。
本企画展では、挿絵画家から日本画家へと転身を図った20代後半から30代にかけての制作に焦点をあて、彩り美しい口絵や挿絵、装丁などとともに、将来への希望を胸に抱いて描いた初期の日本画作品を中心にご紹介いたします。