明治11年(1878) 東京に生まれ、13歳で水野年方 (としかた) に弟子入りし、16歳頃から挿絵画家の道を歩み始めた鏑木清方。20代で人気挿絵画家として活躍する傍ら、日本画の腕も磨きました。29歳を迎えた明治40年(1907)に開設された文部省美術展覧会(文展)をきっかけに日本画に専心するようになります。
明治・大正・昭和の3つの時代を生きた清方は、急速な近代化による開発や関東大震災、東京大空襲の被害で変わってゆく街の姿に寂しさを覚えつつ、明治の庶民の平穏な生活に思いを馳せ、愛しむように描きました。
本企画展では、日本画家としての画業の始まりから後年に辿り着いた画境まで、明治に生きた市民の穏やかな生活を描いた名作《朝夕安居》を中心に紹介いたします。